上田義彦: 旅
静謐かつ内省的、そして東洋的美学に基づいた美しさをもつ写真を発表し続けてきた日本人写真家の上田義彦。エルメス、無印良品、資生堂、サントリーなどの世界的企業の広告写真も含め、数多くの作品を発表してきました。中国の「Posts & Telecom Press(人民郵電出版社)」から出版された本書は、上田本人がセレクトした1982年から2022年にかけての代表作の約400点を収録しています。各時代の商業写真だけではなく、ポートレート、風景写真、旅先での写真など、上田義彦作品を網羅した集大成となっています。作品の美しさはもちろんのこと、本そのもののデザインも美しく、コレクターズアイテムとしても楽しめるものになっています。
作品集を収納している特製の黒い函には、美しい雲のようなシルバーの印刷と、タイトルと作家名が黒で箔押しされ、サインがレーザーカットでくり抜かれています。特別に作られた柔らかくしなやかな紙に印刷された写真集本体は、黒とシルバーを基調に、三方の小口が黒く染められ、繊細さを持ち合わせています。
40数年カメラとともに、いろいろな旅をした。想い出せば記憶は遥か彼方へ、そして今ここにいる。ゆっくり、ゆっくり、あてどなく彷徨い歩いた旅だった。沢山の人々と出会った。そして人々とカメラを通して見つめ合った。そのたびに僕は奇跡を見ることになった。二度と出会えない目の前の光景にクギづけになり、その場に居合わせた幸運に感謝しながら喜びで身体が一杯になった。ここに上げた写真たちは、そんな喜びの記憶でもあるのだけれど、ここからはたして自分は何処へゆくのだろう。40数年かかって、やっとおぼろげに輪郭が見えて来た自分の写真。そう言えば、若い頃はやけに急いでいた。そう、自分の写真を見つけるために。でもそんなに簡単に見つかるものじゃない。それに気づいた頃からゆっくり歩きはじめた。これからも、ゆっくり写真の旅をしたい。世界に身をまかせながら、写真を撮ってゆきたいと思っている。あとどれだけ写真を撮れるだろうか。まだ見ぬ僕の写真に出会う旅を、もうすこし楽しみたいと思う。—上田義彦
ページ: 634
サイズ: 230 x 300 mm
フォーマット: ソフトカバー、ボックス
言語: 中国語
刊行年: 2023
出版: Posts & Telecom Press
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